表皮の構造とお肌のターンオーバー

今回は、メラニン生成のメカニズムについてまとめてみたいと思います。

皮膚は、表皮真皮皮下組織の3つの層から成り立っています。

真皮については、以前こちらで説明致しましたね。

まず、メラニン生成のお話をする前に、今回は、ケラチノサイトケラチン、そしてお肌のターンオーバーについてまとめてみます。そのため、今回は表皮にフォーカスを当てて説明してみたいと思います。

お肌は生まれ変わる

こちらの図を元に、説明していきたいと思います。

図はこちらからお借りしました:https://www.doctors-organic.com/hyouhi/index.html

表皮の最下層にある表皮と真皮の境目は基底層と呼ばれています。基底層では表皮の細胞、すなわちケラチノサイト角化細胞ともいいます)が盛んに細胞分裂しています。ここからケラチノサイトが成長し、押し上げられるように上へ上へと成長し、最終的にケラチンという非常に丈夫なタンパク質に成長します。この一連の変化の過程を角化といいます。また、ケラチノサイトは、表皮の90%程を占めています。

また、基底層には次回説明するメラノサイトが存在しています。

成長したケラチノサイトは、一部は次の分裂に備え基底層に残りますが、その他は、やや扁平になった形で基底層の上の層、有刺層を形成します。

図中の有刺層にあるランゲルハンス細胞というのは、ケラチノサイトとは別の細胞です。免疫細胞でり、体内に入ってきた物質が異物なのかそうでないのかを判断しています。

さらに成長したケラチノサイトは、より扁平になって顆粒層を形成します。そして、ケラチノサイトはここでアポトーシス(プログラムされた細胞死)を迎えます。

顆粒層の上に当たる層が最終の分化であり、角化の最終形態となります。それが肌の最表面、角質層角層ともいいます)にあたります。この段階になると、成分のほとんどはケラチンという固い繊維状のタンパクで構成されて、うろこ状に堆積されていきます。前述したように、死んだ細胞なので細胞核はありません。この角質層は、内部に対しては体内の水分を過剰に蒸発するのを防ぎ、外部に対しては埃や菌などが体内に入るのを防ぐといった、バリア機能を備えています。角質層も大切な機能を持っていますので、後ほどまとめてみようと思っています。

私たちが見ているお肌とは角質層のことであり、死んだケラチノサイトでできたケラチン繊維のことなのです。

そして、表面に達した角質は、基底層で日々分化・増殖してくるケラチノサイトに押し出されるようにして少しずつ垢となって剥離していきます。この角化の一連の代謝のメカニズムを「ターンオーバー」といいます。

基底層でケラチノサイトが生まれてからケラチンになり、剥がれ落ちるまでの期間は約28日、つまり4週間ほどかかります。つまり今見えている肌というのは、1ヶ月前に生まれたばかりものだということです。そして、1ヶ月後にはもう別の肌に生まれ変わっているのです。だから、人の顔というのは細胞レベルでみると1ヶ月で全く違う細胞で構成されてしまうということなのです。

図はこちらからお借りしました:https://www.chocola.com/shimi/column/03/

ケラチンとジスルフィド結合

ケラチンが固い繊維状になっており、丈夫なのは、分子内にジスルフィド結合が多いためです。ケラチンには、他のタンパク質と比べると、シスチンとよばれるアミノ酸が豊富に含まれています。シスチンはシステインというアミノ酸が2つ結合した形をとっています。システインのS(硫黄原子)が、他のシステインのSと結合し、シスチンとなって、固い繊維状となるのです。

↑シスチン。wikipediaより。

図中のS-Sの所を、ジスルフィド結合と言います。ジスルフィド結合は、硫黄原子同士の共有結合です。

化学結合の強さは、

共有結合 > イオン結合 > 金属結合 > 分子間力

の順になっています。ジスルフィド結合は共有結合ですので、一番強い結合の仕方をしているということが言えますね。

また、余談ですが、髪の毛を焦がしてしまうと変な臭いがしますよね。あれは、髪の毛のシスチン内の硫黄が燃えるからだそうです。

ケラチンというのは、お肌だけでなく、髪の毛や爪を構成するタンパク質でもあります。

しかし、タンパク質の構成が違うので、その硬さもまちまちです。毛や、爪のケラチンを硬ケラチン、お肌のケラチンを軟ケラチンと称し、区別しています。以下の表を見ておわかりの通り、シスチンの割合が毛髪と角質層では2倍近く違います。だから硬さもちがうというわけです。

ちなみに、パーマをかけるときにも、ジスルフィド結合が関係しています。毛髪をロッドに巻いたあとに、ケラチン中の強いジスルフィド結合を還元剤により一旦切断し、再度酸化剤を塗布して、切断したジスルフィド結合を再結合させることでケラチンの形状を変化させているのです。毛髪中のシスチンは、再度ジスルフィド結合により別の硫黄原子とがっちりと結合するため、ロッドで巻かれた髪の形状をホールドします。

図はこちらからお借りしました:http://www.sqrta.com/haie-science17/

適切なターンオーバーが大切

先ほど、ターンオーバーは4週間ほどと書きましたが、それは20歳くらいの若い肌を想定したサイクルだそうです。実際は、年齢を重ねるにつれてその期間が長くなります。目安としては、

ターンオーバーの周期=自分の年齢 ×1.5~2倍

とのこと。ターンオーバーが長くなるということは、肌の生まれ変わりが遅いということを意味します。

また、不規則な生活や、寝不足や無理なダイエットによる栄養不良などでもターンオーバーの乱れが引き起こされます。

そうなると、本来ターンオーバーによって輩出されるメラニンが排出できず、色素が沈着してシミが増える原因となってしまいます。また、古い角質がいつまでも肌に残りますので、くすみの原因ともなります。

図はこちらからお借りしました:https://www.ssp.co.jp/hythiol/troublenavi/shimi/cure.html

ターンオーバーを正常化することも、美白のアプローチとして有効であることがここで十分理解できます。

しかし、ターンオーバーは早ければ早いほどよいというわけではありません。ターンオーバーが異常に促進されると、角化がうまく完了しないうちにケラチンが剥離することになりますので、大切なバリア機能が失われてしまうのです。何事もほどほどがよろしいようですね。

さて、長くなってしまいましたので、次回からはいよいよメラニンの形成メカニズムについてまとめてみようと思います。

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