メラニン生成-細胞間のコミュニケーション

メラニン生成シリーズをはじめました

なぜか化粧品のイメージって蘭とか白百合ってかんじですよね。音楽はサン=サーンスとかドビュッシーといったところでしょうか。

今回は、サン=サーンスの「白鳥」でも聴きながら、エレガントにメラニン合成のお話をしてみようと思ったのですが・・・勉強すればするほど知らないことや学ぶべきことが多すぎて、一度では到底完結しそうにありません!!

そのため、これから何回かに分けてメラニンの形成メカニズムについてまとめていきたいと思っております。

さて、前回使用した図で、メラノサイトとケラチノサイトの表皮における位置を再度確認したところで、次に進みましょう。

図はこちらからお借りしました:https://www.doctors-organic.com/hyouhi/index.html

メラノサイトは、ケラチノサイトと共に基底層にあり、ケラチノサイトは細胞分裂を繰り返し、肌表面に向かって角化する、ということでした。

紫外線がお肌に届くと最初に何が起こるのか

紫外線とお肌の関係については、以前少しだけこの記事で説明しています。紫外線B波が表皮に働きかけ、メラニンを生成するのでしたね。

最初に紫外線が肌に到達すると、その刺激に対しお肌の様々な場所で反応が起こります。

まず、肌が紫外線を受けると、ケラチノサイトで活性酸素が発生します。そして、メラニン合成を促すような情報伝達物質をつぎつぎと生成していきます。表皮のケラチノサイトからだけではなく、真皮にある線維芽細胞などからも情報伝達物質が生成され、メラノサイトを刺激します。すると、メラノサイト内にある酵素、チロシナーゼが活性化し、メラニン合成が始まります。

    

図はこちらからお借りしました。

左は花王のサイト:https://www.kao.com/jp/skincare/work_04.html

右はメナードのサイト:https://corp.menard.co.jp/research/tech/tech_02_05.html

生体には、環境に適応するために、異なる細胞同士で情報を伝達し合って生体を維持しようという機能があります。つまり、情報を伝達することにより、あらゆる外界の刺激に対して細胞同士が連係して振る舞うことで、一つの統合した生命体として機能しているんですね。

今回は、この生体におけるシグナル伝達システムについて少しまとめてみようと思います。

細胞間のコミュニケーション

生体内の様々な働きを調節したり、活性化させたりして何らかの影響を与える役割をもった物質を生理活性物質といいます。ビタミン、ミネラル、酵素、ホルモンなどがそれに当たります。これらは微量であっても生体に大きな影響を及ぼします。

ビタミンや酵素は、生体内で様々な化学反応に用いられますが、そのほかに細胞間で情報を伝達するために使用されるものがあり、それらをシグナル分子と言います。

シグナル分子はさらに、大まかに2種類に分けることができます。ホルモン細胞増殖因子です。

ホルモンは、特定の器官で合成・分泌され、血液を通して別の細胞に影響を及ぼすものです。内分泌といって、血管を通して他の細胞に情報を伝達します。

細胞増殖因子は、細胞の成長や増殖を促進するシグナル分子のことです。しかし近年、増殖以外の機能が見出されているので、増殖因子を含め、その他の目的の情報を伝達するため細胞から放出され、別の細胞に渡される物質情報伝達物質と総称しています。

情報伝達物質には、細胞増殖因子の他に、

脂肪細胞が分泌するアディポカイン

筋肉細胞が分泌するマイトカイン

免疫細胞が分泌するサイトカイン

などがあります。メラニン生成においては、活性酸素に対する反応ですので、免疫細胞によるサイトカインが主なものになります。

では、こうした情報伝達物質は、どのようにして情報を伝えたい細胞に運ばれていくのでしょうか。

シグナル伝達の方法としては、

内分泌(エンドクリン)

傍分泌(パラクリン)

自己分泌(オートクリン)

があります。このほかには神経細胞に関するもの、細胞接着に関するもの、電気シナプスに関するシグナル伝達の形態がありますが、今回関係するのは上記に挙げた3つになります。

こちらの図を参照して説明してみようと思います。

図はこちらからお借りしました:http://csls-db.c.u-tokyo.ac.jp/search/detail?image_repository_id=391

エンドクリン型は、血管に流れる血液を通して他の細胞にシグナル分子を運ぶものを言います。血管内を旅して運ばれますので、遠いところにある細胞に働きかけることができます。ホルモンがこれに当たります。

パラクリン型異なる細胞間で、オートクリン型自分自身の細胞にシグナル分子を運ぶものになります。これらは近傍にある特定の細胞に直接働きかけることができます。サイトカインはこちらに当てはまります。

図中、シグナル分子(青い丸)を出している細胞を分泌細胞、シグナル分子を受け取っている細胞を標的細胞と言います。

標的細胞には、あるシグナル分子を選別して受け入れる受容体レセプターといいます)が細胞膜を貫通する形で細胞の外部についています。上の図で言うと緑色のY字のものがレセプターです。それにより特定のシグナル分子だけを細胞内に受け入れます。

図はこちらからお借りしました:http://www.e-kanpo.jp/sigunaru/sigunaru.php

上の図を参照しておわかりの通り、あるシグナル分子に対し、合致するレセプターは決まっています。そのため標的細胞は選択的にシグナル分子を受け入れることができるのです。そしてこのことはしばしば「特異的」と表現されます。レセプターに対して「特異的に」結合するシグナル分子のことはリガンドと表されます。

また、シグナル分子は疎水性のものと親水性のものがあります。

疎水性のものは脂溶性ですので、脂質二重膜でできた細胞膜を通過できるため、そのまま細胞内に入り、細胞内の受容体と結合することができます。このように細胞内にあるレセプターを核内受容体(細胞内受容体)と言います。

しかし、親水性のものは水溶性なので、細胞膜の脂質部分を通過することができません。そのため上記で説明したように、細胞膜を貫通するレセプターと結合して細胞内に入っていかなくてはなりません。このようなレセプターを細胞膜貫通型受容体(細胞膜受容体)と言います。

図はこちらからお借りしました:http://kusuri-yakugaku.com/difference-membrane-nuclear-r/

オートクリンの図をよく見ると、同じ細胞内なのに、なぜシグナル分子を一旦外に出してから受け取るなんてまどろっこしいことをしているの?と思いますが、その理由は、親水性のシグナル分子に対して受けるレセプターが細胞外にあるためなのです。

その後、細胞膜受容体と結合し、細胞内に受け入れられたシグナル分子は、セカンドメッセンジャーと呼ばれる別の情報伝達物質を作ります。そして今度は細胞内のシグナル分子として機能し、さらに細胞内受容体と結合することで、細胞に様々な特定の作用を及ぼします。

紫外線を受けた肌は、このように、紫外線の刺激からの活性酸素より、様々なサイトカインを誘発し、ケラチノサイトや線維芽細胞からシグナル分子を送り、メラノサイトのレセプターで受け入れた後、セカンドメッセンジャーを経て、メラノサイトの酵素を刺激してメラニンを生成するに至ります。このような、少しの刺激を起源とし、その過程が進むにつれ、関与する物質の数が増大していき、大きな反応を誘導することを、カスケードといいます。

その反応は複雑であり、様々なシグナル分子が影響し合っています。一つの経路だけでなく、別の経路との間で影響を与え合うこともあり、これをクロストークといいます。

例:哺乳類の細胞内での主要なシグナル伝達(wikipediaより)

しかし、そういった信号は、私たちには感じることはできません。肉体は魂の乗り物と言われますが、魂の意識に関係なく、肉体自体もある種の意思を持って振る舞い、一つの統合されたシステムを構成しているのです。不思議ですよね。

逆に、第六感があるという人は、こういった細胞同士の「ささやき」を感じることができて、他の人には感じないことを感じてしまう人たちなのかもしれません。なんてことを考えていくと妄想が止まりませんが・・・

次回は、メラノサイトに着目し、信号を受け取ったメラノサイトがどのようにメラニンを生成していくのかをまとめてみようと思います。

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