ビタミンC アスコルビン酸誘導体とは?その働きと構造

前回は、アスタキサンチンの抗酸化作用についてまとめてみました。また、ビタミンEについても触れましたので、今回は、あの有名な抗酸化物質であるビタミンCについてもまとめてみようと思います。

ビタミンC(アスコルビン酸)の働き

ビタミンCは、美容に欠かせない成分として有名ですね。

前回まとめたように、ビタミンCは、脂質膜にてラジカルとなったビタミンEに再度電子を分け与え、再生させることができます。ビタミンEは、脂質中のフリーラジカルに自分の電子を与え、自らはビタミンEラジカルとなり、フリーラジカルによる脂質の連鎖的酸化を阻止します。そのように発生したビタミンEラジカルは、ビタミンCによりビタミンEに再生され、再度フリーラジカル捕捉能を取り戻します。

ビタミンCは、美白に効果があることでも有名です。

メラニン生成の過程では酸化反応によってメラニン色素が濃くなっていくため、ビタミンCによる還元作用によってメラニン生成を阻害したり、色素を還元したりすることができます。

メラニンは、チロシン→ドーパ→ドーパキノン…と酸化するにつれ、色が黒くなっていきます。前回こちらでまとめました。

また、ビタミンCは、コラーゲンのペプチド鎖におけるプロリン残基をヒドロキシル化してヒドロキシプロリンに変換させることで、三本鎖らせんを安定化させ、強固なコラーゲン繊維へと変換するのに必須の成分です。

一番上の図でいうと、グリシンーXーYで、XとYは、プロリンとヒドロキシプロリンであり、後者は最初プロリンなのですが、ビタミンCの働きでヒドロキシプロリンとなり、コラーゲンが形成されます。以前こちらでまとめました。

そのため、ビタミンCが欠乏するとコラーゲンの合成が阻害されるため、細胞間を埋める細胞外マトリックスの保持に障害を与え、それが血管の損傷につながり、出血してしまうのです。そのようなビタミンC欠乏による疾患を壊血病といい、長期間野菜を食べることができない大航海時代の船乗りによく起こる病気だったそうです。

生物では、霊長類以外の動物はビタミンCを体内で生成できますが、人間は生成できないので、野菜や果物から定期的に摂取する必要があるのです。

ビタミンCはアスコルビン酸ともいいますが、その壊血病が名前の由来となっています。アスコルビン酸(Ascorbic Acid)の「Ascorbic」は、「anti」「scorbic」の略であり、「scorbic」は、「scurvy(壊血病)」を意味していますので、文字通り“抗壊血病の酸”という意味なのです。

アスコルビン酸とは?

アスコルビン酸は、不斉炭素をもつ物質であり、D体とL体があります。ビタミンCとして知られるのはL体の方となります。D体の方は、特にエリソルビン酸とも呼ばれています。しかし、生理活性がある方がL体のL-アスコルビン酸となります。

丸で囲った部分、OHとHが逆になっているのがわかりますね。

L-アスコルビン酸は、エンジオール基という強い還元性を示す部分をもっています。エンジオール基は、電子をラジカルなどに渡して酸化されると、デヒドロアスコルビン酸になります。

上の図を参照すると、アスコルビン酸のエンジオール基の2つのH(水素)をラジカルなどの活性酸素に渡すと、二重結合がとれて単結合となったデヒドロアスコルビン酸になります。この酸化型のアスコルビン酸と酸化型のデヒドロアスコルビン酸を指して、ビタミンCといいます。

電子を渡した酸化型のデヒドロアスコルビン酸は、水と反応しやすく、容易に分解されてしまいます(加水分解)。その結果できたものが2,3-ジケトグロン酸となります。

しかし、ラクトン環が開裂してしまった2,3-ジケトグロン酸からは、再度デヒドロアスコルビン酸に戻ることはできません。ビタミンCは壊れやすいといわれるのは、この酸化型のデヒドロアスコルビン酸の加水分解のされやすさとその不可逆性に由来しているものなのです。

このように、酸化型のビタミンCであるデヒドロアスコルビン酸は、水に溶けた状態では不安定で、すぐ元に戻れない2,3-ジケトグロン酸となりビタミンCとしての活性を失ってしまいます。そのため、化粧品では、ビタミンC成分として安定化させたアスコルビン酸誘導体の形で配合されています。

アスコルビン酸誘導体とは?

アスコルビン酸誘導体には、

1.水溶性アスコルビン酸誘導体
2.脂溶性アスコルビン酸誘導体

があります。

FRLニュース  ビタミンCについて

水溶性アスコルビン酸誘導体は、上の図でいうとアスコルビン酸2-リン酸、アスコルビン酸2-グルコシドになります。

アスコルビン酸のエンジオール基のHが容易に取れて酸化されやすいという性質を逆手にとって、このHをリン酸糖(グルコースなど)に置換したものです。

アスコルビン酸2-リン酸は、還元型アスコルビン酸のR1部分にリン酸基を導入したもの、アスコルビン酸2-グルコシドは、同じくR1部分のHにグルコースを置換したものになります。これらは体内に入ると、体内の酵素によりそれぞれの置換基が取れて、ビタミンCとしての働きをするようになります。

また、水溶性のアスコルビンを、その安定性のみならず、油脂に添加したり、細胞膜への吸収性を向上させるために、脂肪酸エステルをエンジオール基以外の水酸基の部分(上の図でいうとR2部分)につけ、油溶性にしたものも使用されています。それが脂溶性アスコルビン酸誘導体であり、図中の下の2つになります。

これらはクリームや美容液などリッチなつけ心地の美容成分として使用されます。また、エンジオール基のHはそのまま残っており還元性を示しますので、抗酸化物質として食品添加物に用いられることもあります。

下記の図は、アスコルビン酸パルチミン酸エステルの構造式です。パルチミン酸は、別名ヘキサデカン酸であり、16個の炭素を有する脂肪酸を意味します。

ヘキサデカン酸のエステル結合した部分以外の、上記の丸で囲った部分はすべてC(炭素)とH(水素)であり、この部分は疎水性部分となっていますので、脂溶性となるのです。

ビタミンCというと、さっぱりした仕上がりの商品が多いですが、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルという、ヘキシルデカン酸を3つもつけたアスコルビン酸誘導体もあります。こちらはオイルベースのしっとりした使用感となっているようです。

これでもか!ってぐらいに疎水性部分が付加されているのがわかりますね。

また、面白いことに、両親媒性を有するアスコルビン酸もあります。APPSといい、ビタミンCにリン酸パルミチン酸を結合させることにより安定性を高めたものです。リン酸が水溶性を、パルチミン酸が脂溶性を示すことから、両親媒性と呼ばれています。ちなみにAPPSはアプレシエとも呼ばれる昭和電工の商標なのです。

今回はビタミンCについてまとめてみました。次回は前回少し説明したカロテン類や、ポリフェノール類などの抗酸化作用を持つ物質についてまとめたいと思います。

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