前回は、表皮のバリア機能についてまとめてみました。
その中で、セラミドは、

2.角質細胞のコーニファイドエンベロープのインボルクリンやロリクリンと架橋することで、角質細胞と強固に結合することによって接着する。

という二つの機能を果たし、内からは水分の蒸発を防ぎ、外からは外部刺激をシャットダウンする役割を果たしている、ということでした。
今回は、そんな表皮の保湿とバリア機能に欠かせないセラミドの構造と組成についてまとめていきたいと思います。
セラミドの構造による分類
セラミドとは、スフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合した化合物の全てのことを指します。「セラミド」という一つの化合物を指すものではないんですね。そのため、いくつかの種類があります。
まず、セラミドを構成している以下の2つの物質からみていきましょう。
(2)脂肪酸
(1)の「スフィンゴシン」とは、18個の炭素をもつ「長鎖アミノアルコール」と呼ばれる物質で、二重結合を一つ含むものになります。長鎖アミノアルコールですので、アルコールであるOHと、アミノ基NH2を含んでいます。

(2)の「脂肪酸」とは、長鎖炭化水素にカルボン酸がついたものを総称したものです。

https://www.j-oil.com/oil/type/fa/
上記は例としてパルチミン酸を挙げています。末端にカルボキシ基COOHがついていますね。
このスフィンゴシンのアミノ基(NH2)と、脂肪酸のカルボキシ基(COOH)が結びついてアミド結合したものが「セラミド」になります。

上記、スフィンゴシンはオレンジの部分、脂肪酸は緑色の部分です。アミド結合が2つの部分をがっちりとつないでいるのがわかりますね。
さらに、この(1)スフィンゴシンと(2)脂肪酸は、更に大分類として以下の通りに分類されます。

yucera.jp/2015/06/08/ヒト皮膚同一型セラミド/
(1)スフィンゴシン
上記の図より、青字のものがスフィンゴシンになります。スフィンゴシン部分にはOHがたくさんついているのがおわかりかと思います。このOHが水素結合によって水を引きつける役割を果たしています。
ジヒドロスフィンゴシン | (dihydrosphingosine) | DSタイプ |
スフィンゴシン | (sphingosine) | Sタイプ |
フィトスフィンゴシン | (phytosphingosine) | Pタイプ |
6-ヒドロキシフィンゴシン | (6-hydroxy sphingosine) | Hタイプ |
(2)脂肪酸
上記の図では、黒字のものが脂肪酸になります。ヒドロキシ基の有る無し、またエステル結合により長鎖になったものなどで分類されます。
非ヒドロキシ脂肪酸 | (non-hydroxy fatty acid) | Nタイプ |
αヒドロキシ脂肪酸 | (α-hydroxy fatty acid) | Aタイプ |
ωヒドロキシ脂肪酸 | (Esterified ω-hydroxy fatty acid) | EOタイプ |
セラミドが4種の「スフィンゴシン」と、3種の「脂肪酸」から成り立っていますので、大分類だけでもなんと4 × 3 =12種のセラミドがあるということです。一概にセラミドと言っても、これだけの数があるんですね。
しかも!これは大分類での分け方であり、さらに細かく分類すると300種類以上あるとも言われています。その上、まだ発見されていないセラミドもあり、そのはたらきも全て解明されているわけではないそうです。これからセラミドについての新たな発見や知見がもたらされてくるのかもしれませんね。
セラミドの由来の違いによる分類
さらに、由来の違いによっても以下のように分けられます。
(2)天然セラミド(動物性、植物性)
(1)の「ヒト型セラミド」は、おもに酵母を利用して生成された化粧品成分です。化学合成や、遺伝子の形質転換によって生成されたりします。が、天然のヒト型セラミドも新たに発見されたりもしています。後ほどまとめたいと思っています。
次回以降に説明致しますが、ヒト型セラミドを標榜するにはいろいろな条件があり、これをクリアしないとセラミド本来の機能を果たすことができません。そのため、化粧品の全成分表示に「セラミド」と表記できるのは、この「ヒト型セラミド」だけです。
また、ヒト型セラミドを高濃度で配合するのはなかなか難しいので、化粧品業界では、価格が3000円以下の価格の化粧品を選ぶのはあまりよい選択ではないと言われています。
一方、(2)の「天然セラミド」は、合成で作られるものではなく、動物や植物から抽出した成分になります。
動物性のものは、馬などの脳や脊髄から抽出されています。本来はウシから抽出されていましたが、狂牛病問題があり、馬で代用するようになりました。
植物性のものは、コメ、トウモロコシ、大豆、コンニャク、小麦などが挙げられます。
天然と称されていますが、植物体や微生物からセラミド類を抽出するために、有機溶媒を使用しています。
天然セラミドとヒト型セラミドの構造的な違いとしては、スフィンゴシン部分と脂肪酸でできたセラミド骨格に対し、糖がついていることです。
例えば、植物セラミドはグルコースがセラミドに結合したグルコシルセラミドであり、馬セラミドはガラクトースがセラミドに結合したガラクシルセラミドです。

https://www.mst.or.jp/casestudy/tabid/1318/pdid/83/Default.aspx
上記は様々な植物由来のグルコシルセラミドの構造式を表しています。セラミド骨格の先端についている6角形のかくかくしたものが糖です。

https://eijingukea.nahls.co.jp/seibun/seramido/hitogata/
単純化して表すとこうなります。ヒト型セラミドとの違いは明らかですね。
そのため、天然セラミドがヒト型セラミドと同じような機能を果たすかというと、これはこれで別の物質であるため難しいようです。
しかし、サプリメントとして取ることで、肌の保湿効果が得られるものもあります。天然由来ですので、食物として摂取するには安全なセラミドであると言えるでしょう。
セラミドの合成
セラミドって、スフィンゴシン部分と脂肪酸をくっつければヒト型セラミドになるし、合成って簡単なのでは?と思ってしまいますが、実はこれがなかなか難しいのです。
つまり、ただお肌をうるおいで満たすだけでなく、冒頭で挙げたようなセラミド固有の機能を得るためには、様々な条件が必要となるのです。そう考えると、セラミドって天然の高機能美容液みたいですね。
コメントを残す