みずみずしいお肌をつくる角質層の働き

お肌の潤いを保つには?

みずみずしく若々しいお肌には、水分がたっぷりと含まれています。今回は、その水分を保持する皮膚の機構についてまとめたいと思います。

こちらでまとめましたとおり、表皮には、外側から「角質層」、「顆粒層」、「有棘層」、「基底層」の4つの層があります。そして、その大部分を「ケラチノサイト(角化細胞)」が占めており、日々、ケラチンへと成長するように4週間かけて変化(角化)していきます。

https://www.doctors-organic.com/hyouhi/index.html

そして、この角化作用によりできた角質層は、バリア機能があるということでしたね。

バリア機能というのは、外界からの刺激からお肌を守る機能のことです。主に、細胞やその構成成分の密着の強さに起因します。また、みずみずしいお肌を守るということは、保湿するための水分保持能力の他に、肌内部からの水分の蒸発を守るという事も含まれます。つまり、バリア機能と保湿とは表裏一体であるということが言えるでしょう。

今回は「角質層」、「顆粒層」にフォーカスを当て、表皮においてどのように水分が保持されているか、また、どのようにバリア機能が果たされているのかということを説明したいと思います。

角質層について

角質層(角層ともいいます)は、しばしば「レンガの壁」をモデルとして説明されます。

https://cella.jp/skin_care/detail.php?p_id=1080

レンガに当たるものは、角質細胞(ケラチノサイト)です。図のように表皮の中を規則正しく層状に整列しています。角質細胞は、主に硬いケラチンというタンパク質でできています。こちらの記事で説明した通り、ケラチンとは角化の最終形態であり、アポトーシスを迎えた細胞核のない死んだ細胞のことでしたね。

そのレンガである角質細胞を埋めるように満たされているのは、角質細胞間脂質です。「レンガの壁」でいうとモルタルに当たります。

角質細胞間脂質は、約50%がセラミドで、残りの30%がコレステロール、20%が脂肪酸で構成されています。

そして、面白いことに、この角質細胞間脂質は、細胞膜の脂質二重膜のように、親水基(水分)と疎水基(脂質部分)同士があつまり、脂質と水分が交互に重なったミルフィーユのような構造をとります。この構造をラメラ構造と言います。

http://www.kaisyou-navi.jp/category4/entry17.html

ここでも界面活性剤と同じマッチ棒モデルが出てきますね。

このラメラ構造では、セラミド層により水分をしっかりと保持することができます。また、セラミドには、どんなに乾燥した環境でも、ある量の水分を分子の形で細胞間脂質の間につなぎとめることができる働きがあります。

セラミドと角質層

角質細胞の細胞膜の内側には、周辺帯(コーニファイドエンベロープ、cornified Sell envelope:CEとも)と呼ばれる、極めて強靭な不溶性タンパクの膜があります。

周辺帯は主に、角質層以下にある有棘細胞でつくられるタンパク質(インボルクリン)や、顆粒細胞でつくられるタンパク質(ロリクリン)で構成されます。これらのタンパク質は、ケラチノサイトの分化によって産生されます。

顆粒細胞から角質細胞への分化の際、インボルクリンやロリクリンなどのタンパク質は、トランスグルタミナーゼ(TG)という酵素により架橋され、角質細胞を覆うようにして周辺帯を形成します。

http://jibunkoujyou.blog19.fc2.com/blog-entry-2564.html

セラミドはさらに、このインボルクリンやロリクリンなどの周辺帯の構成タンパクと架橋することで、角質と細胞間脂質を強固に接着しています。この強固な接着が、外部からの刺激の侵入や、体内の水分の過剰な蒸散を防ぐことでバリア機能を果たすのです。

ちなみにここでいう架橋というのは、タンパク質などの生体成分が、時間経過とともに自然に、あるいは酵素反応などを介して共有結合して結びつくことを意味しています。共有結合は化学結合の中で最も強い結合でしたね。

 共有結合 > イオン結合 > 金属結合 > 分子間力

洗剤を使用すると、手が荒れてしまいますよね。それは、洗剤に含まれる界面活性剤によって肌のセラミドが溶け出すことによる、肌のバリア機能の低下が一因だったというわけです。

ケラチノサイトとNMF(天然保湿因子)

角質細胞間脂質とは別に、ケラチノサイトの中自体にも保湿する成分が含まれています。この保湿成分は、天然保湿因子(NMF:Natural Moisturizing Factor)といい、ケラチノサイト内に水を引きつけ、保持しています。そのため、NMFは「肌が作り出す天然の保湿剤」と言われています。

NMFの主な成分は、アミノ酸類(セリン、アラニン、グリシンなど)、ピロリドンカルボン酸PCA、アミノ酸であるグルタミン酸からできる)、乳酸、尿素、クエン酸塩などで、いずれも水分をかかえこむ力があります。

http://www.kaisyou-navi.jp/category4/entry17.html

そのため、アミノ酸自体を肌に塗ることで、バリア機能を高めることが可能とのこと。

詳しくはこちらの味の素の記事をご覧下さい:

アミノ酸補給による肌の保湿力向上に新知見〜アミノ酸は角層の5層目まで浸透、アミノ酸クリームによるバリア能向上を確認〜

アミノ酸、特にPCAのもととなるグルタミン酸などはうまみ成分としても有名です。だから味の素でアミノ酸クリームが開発されているんですね。意外な組み合わせですが、なるほどというか、面白いというか。

ちなみにこのアミノ酸クリーム、こんな商品でございます。

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ここまでをまとめてみます。

角質層は、

1.角質細胞

2.角質細胞間脂質

3.天然保湿因子(NMF)

からなり、お肌の潤いに必要な水分の保持は、角質細胞間脂質のラメラ構造、角質細胞内の天然保湿因子の働きによるものである

角化が進行するにつれて潤いの元が作られる

もう一度表皮の構造を確認するために、この図を見てみましょう。

さて、今度は角質層の下の層、顆粒層に着目してみましょう。上記の潤い因子である、セラミドやNMFは、実はここで作られています。

顆粒層の細胞には層板顆粒オドランド小体ともいいます)やケラトヒアリン顆粒という顆粒状の物質があります。

層板顆粒からは、角質細胞間脂質のセラミドが放出されます。さらに、顆粒細胞細胞膜からは遊離脂肪酸が分泌されます。

ケラトヒアリン顆粒は、天然保湿因子(NMF)のもととなる前駆体のプロフィラグリンを経て、その後フィラグリンを生じます。

フィグラリンは、ブレオマイシン水解酵素(BH)という酵素によって細かく切り刻まれてNMFとなります。このブレオマイシン水解酵素は、資生堂によって発見されました。

資生堂、肌の天然保湿因子「NMF」産生メカニズムを解明

また、ここ顆粒層では、上皮細胞(ケラチノサイト)の隙間を密着させるタイトジャンクション(密着接合)で隣り合う細胞同士がくっついています。

タイトジャンクションというのは、細胞接着のうちの一つで、膜タンパク質(クローディンオクルディン)が、隣り合った細胞の細胞膜をジッパーのように連続的につなぎあわせる接着機構です。これにより、細胞外への物質の移動が阻害され、過度の水分蒸散を防止しています。

https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1556

膜タンパク質は、細胞膜に埋め込まれたタンパク質です。クローディンとオクルディンは、細胞接着分子とも呼ばれ、上の細胞膜の図で言うと「接着タンパク質」にあたります。

角化の段階にある顆粒層では、セラミドやNMFなどの潤い成分が作られ、細胞同士の接合がなされています。ということは、顆粒層というのはお肌の潤いやバリア機能に関して重要な役割を果たしているということです。みずみずしいお肌を作るためには、顆粒層での健全な角化によって生じる、様々な潤い成分となるタンパク質の産生が必須であるということですね。

メラニン生成の時にもまとめましたが、適切なターンオーバーによる健全な角化が、潤いを保つためにも大切であるということが結論づけられます。

次回は、セラミドについて更に細かく見ていきたいと思います。


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